書評(という感想)

『不登校からの回復の地図』明橋大二|書評(という感想)

しっかり不登校した方がしっかり回復する
まさこ
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子どもが不登校になると、「どうしてうちの子が?」と、親心は揺れます。

「なんで行けないの?」
「どうしたらいいの?」
「言われた通りにするので、うちの子をなんとかして!」

子どもを傷つけないように気持ちを抑えているものの、子どもは昼夜逆転になったり、だらだら過ごす様子…。

他の子と比べちゃいけない、子どもの回復が大事!…って頭でわかってても、理性と感情がぶつかり合います。

その一方で、不登校の親である先輩たちは、なんだか一線を超えたおおらかさを感じる。
それなのに自分は…と、今度は落ち込みモードになってしまうとか…。

そんな複雑な不登校の親心と、ど直球に向き合ってくれている明橋大二先生の不登校の本です。

悩んでいる時期の背中をポンポンなでてくれる優しい感じです。

ということで本の紹介にはいります。

大丈夫。しっかり休んだ子ほど、しっかり回復します


本を開いてすぐ目に入るのが

大丈夫。しっかり休んだ子ほど、しっかり回復します

という一文です。

子ども自身だって「これからどうなるんだろう」と、不安でいっぱいな時に

「不登校になったら人生が終わり」
「学校も行けないようじゃ社会でき生きていけないよ」

と言われると、子どもだって親だって追い詰めてしまいます。

実際には、文部科学省の委託で行われた森田洋司先生の不登校の予後調査で、中学3年で不登校だった子の約8割が、5年後には学校や仕事に通っていたそうです。

だからこそ、この本に書かれている「大丈夫」という言葉は、ただの希望ではなく、数多くの現場経験と長期的なデータに裏づけられた、確かな言葉なのだとわかります。

著者:明橋大二先生

明橋先生といえば、「子育てハッピーアドバイス」の著者。子どもの自己肯定感を育てる考えの第一人者として知られています。

私自身も、長男2歳・次男0歳のてんやわんやの毎日に追われていた頃、この本に出会って衝撃を受けました。
「こっちが泣きたい!」と思う日々に、救われたシリーズ本です。

明橋先生は、精神科医として子どもや保護者に向き合ってきた実践者
そして、児童相談所嘱託医やスクールカウンセラーとして現場に立ちながら、支援者を育てる指導者としても活動されています。
文部科学省主催の講演会などでも、「支援者は、子どもと保護者の味方であること」を、繰り返し伝えてくれています。

のちに私もご縁があって直接お会いする機会がありましたが、本のまま、正面から人と向き合う温かい先生でした。

不登校の親に感じる「おおらかさ」


ところで、SNSを見ていると、不登校を経験した親の発信には、不思議とおおらかさを感じることがあります。

ふつうに子育てをしているだけでも大変なのに、子どもが不登校になって寄り添い続けるのは、エネルギーが必要なことです。
それでも、どこか包み込むような広さがあるのです。

なぜだろうと考えていたら、本の中で答えを見つけました。

「不登校の親がやるべきことの3つ」

1.疲れている子どもをこれ以上疲れさせない。

2.傷ついている子どもをこれ以上傷つけない。

3.不安な子どもをこれ以上不安にさせない。

p73

本に書かれていた「3つのこと」は、一見当たり前に思えても、実際に実行することはとても難しいと思います。

それでも不登校という現実を前にして、子どもと向き合って試行錯誤して葛藤して…だからこそ身に付く自然の雰囲気なのかもしれません。

本当は「大丈夫」と信じたい

頭では「休むことが大事」とわかっていても、現実は昼夜逆転やゲーム漬けの毎日。
「行きたい」と言うけど朝になったら行かない。親を小間使いのように扱ったり、物を投げたり…。

そんな子どもの姿を前にすると、「いつまで続くのか」と疑いや不安ばかりが浮かんできます。親だって疲弊していきます。

信じたいのに信じきれない。
それでも信じたい気持ちはある。
でもやっぱり、どうしても腑に落ちない。

だからこそ、大事なのは「信じきれない自分」を責めないことなのかもしれません。

本には、こんな言葉がありました。

子どもが不登校になった意味を、みんなで徹底的に考えていくと、その先で必ず人間にとって本当に大切なものは何か、という問いに突き当たります。

そこまで考え抜いたところに、「感謝」という大きな幸せがまっているのです。

もちろん、目の前の苦しみにあえいでいる人に、感謝せよといっても無理ですし、強制されて感謝できるものでもありません。(中略)

ですから、不登校は決して不幸なことではなく、どんな場合でも、幸せに転じる可能性を持っていると、私は思っています。

p173、第4章『変わるべきは子どもではなく「教育」です』

わが子の「ちょうどいい」を探しながら、受け入れ、認め、愛していく。そして、子どもを大切に思う気持ちと同じくらい、頑張っている自分にも〇をつけてあげる。

そんなふうにして、親もまた成長していくのかなと思います。

まとめ

この本は、はじめから最後まで「大丈夫。しっかり休んだ子ほど、しっかり回復します」というメッセージにそって書かれています。

世間には「不登校になったら人生は終わり」などの声もありますが、実際の調査では、中3で不登校だった子の8割が、5年後には学校や仕事に通っていたそうです。

つまりこの「大丈夫」は、ただの希望ではなく、たくさんの現場経験と、長期的なデータに裏づけられた確かな言葉なのだと言えます。

特に「疲れている子をこれ以上疲れさせない」など、親が心に留めておきたい3つの指針はシンプルだけど深いものです。

不安でいっぱいでも「きっとよくなる」と信じたい。

でも・・・と揺れる気持ちを、この本はまるごと受け止めてくれます。

まるで、背中をポンポンなでてくれるような優しい本です。

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まさこ
まさこ
看護師/キャリアコンサルタント
Profile
「白衣がなくても資格は消えない」
病院・保健福祉センター・保育所での勤務を経て、現在は研修講師、キャリアコンサルタントととしての相談支援、書籍や記事の執筆など多方面で活動しています。
30代で、一度看護師以外の仕事にも挑戦してみようと面接を受けたとき、「看護師なのに?」と落ちた経験があります。
資格は強みでもあり、ときには重荷にもなるもの。 そんな現実があるからこそ、看護師の資格を活かす多様な働き方を、一緒に探していきたいと思っています。
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